ウェブサイト「環」

平成18年3月10日 第181号
九州経済産業局広報・情報システム室


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■九州経済産業局幹部雑感

  職人国家とサポーティング・インダストリー

地域経済部長 内藤 理(ないとう おさむ)
 

狩猟民族は、農耕民族よりも戦略性に優れていて、だから、農耕民族国家である日本は、狩猟民族国家である欧米諸国よりも国家戦略が劣っているという俗説があります。
本当に、日本の国家戦略が劣っているかということは、この際、脇に置いておくことにしましょう。それよりも、日本人は、本当に農耕民族なのでしょうか? 農耕民族は、一般に、できるだけ少ない労力で沢山の収穫を上げることを考える訳ですが、日本の農家だけは、真っ直ぐなキュウリや宝石のようなイチゴを作るために、労力と研究を惜しみません。凝り性で完全主義という職人気質そのものを発揮しているのです。日本は、農耕民族国家というよりも、職人国家といった方が良いように思います。

この職人国家という特質のお陰で、日本は、江戸時代に精緻な省資源社会を形成し、第2次世界大戦後は、高品質なメイド・イン・ジャパンを産出することができたのではないかと思っています。また、最近の景気回復も自動車産業や電気機械産業など国際競争力を有する製造業が牽引していますが、それらの産業を支えているのが鋳造、鍛造、プレス加工、金型、メッキ、切削等の基盤的な技術を有する中小企業群です。これらのサポーティング・インダストリーと呼ばれる中小企業群は、特に職人的な要素の強い業種で、職人国家の真骨頂であると言えます。

 さて、経済産業省では、今国会に「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」を提案しています。この法案は、我が国製造業の国際競争力の強化と新事業の創出のために、サポーティング・インダストリーの研究開発とその事業化を支援するものです。
具体的には、下記の技術分野について、「特定ものづくり基盤技術高度化指針」を定める予定です。(これらの技術分野は、必要に応じて、逐次、追加します。)

1メッキ 2鋳造 3プレス加工 4鍛造 5熱処理 6切削加工
7金型 8動力伝達 9位置決め 10真空の維持 11接合 
12ソフトウェアの設計 13織染加工 14電子部品・デバイスの実装
15プラスチック成形加工 16高機能化学合成・微細化 17発酵

 そして、この指針に沿って中小企業が研究開発と事業化の計画を作成すると、経済産業大臣の認定を受けることができます。
認定を受けた中小企業は、下記のような支援措置を活用できます。

1 研究開発に対する助成
3年以内の委託事業として、数千万円〜数億円/年の規模で支援を受けられます。
予算総額としては、平成18年度は、約64億円が用意されています。

2 信用保険の特例
認定計画に必要な資金の借入について、利用できる信用保険の限度額が拡大されます。

3 中小企業投資育成株式会社の投資の特例
資本金3億円を超える中小企業も投資を受けられるようになります。

4 中小企業金融公庫の低利融資
認定計画に必要な資金について、特利3(5年以内ならば現在1.20%)で借り入れることができます。
その際、貸付期間は、設備資金ならば20年以内、運転資金ならば原則5年以内となります。

5 特許料等の減免
認定計画の成果を特許化する場合、審査請求手数料と1〜6年目の特許料が半分になります。

 これらの支援策によって、トップレベルの中小企業だけでなく、それらに続くレベルの中小企業も前広に支援して、我が国のサポーティング・インダストリーのトップ層の厚みを増すことを狙っています。

本法案が今国会で可決成立された場合には、速やかにこれらの支援策を実施する予定ですので、九州のサポーティング・インダストリーの方々は、是非、早めに私ども九州経済産業局に御相談下さい。また、大臣による認定だからといって、気後れする必要はありません。中身が詰まっていない段階で結構ですから、どうぞお気軽に声をお掛け下さい。